ここでは、託児所・保育園の運営を外部に委託するメリットとデメリットについて解説しています。
自社で保育園の運営を行うことを託児所や保育園の「直営」と呼びます。直営の場合には、保育園運営に必要となる場所や遊具、備品の準備に加え、そこで働く保育士をはじめとする職員も自社で雇用します。また、安全な保育環境を構築して継続するための研修やマネジメントなどについても自社で行っていきます。
上記に対して、保育を行う場所のみ自社で用意して、それ以外の運営については保育園運営会社に委託することを「運営委託」といいます。この場合、専門的なノウハウを持っている運営会社に対して保育園で働く職員の雇用や研修などに加えて、保護者からの相談など非常に幅広い業務の委託が可能です。運営会社によっては、保護者の満足度が向上するような提案やアドバイスなどを提供する場合もあります。
託児所・保育園の運営を委託すると、以下のようなメリットがあります。
保育士の採用や教育・研修などを含めた管理や必要書類の提出や行政への対応、保護者からの問合せやクレーム対応などを任せることができるので、業務負担が軽減します。
経験とノウハウを持った業者が運営を行うので、保育サービスの質の向上が期待できます。また各種イベントや野外活動、病後児保育など自営では難しいサービスも可能になります。
保育園の運営を圧迫するのは保育士の人件費ですが、外部委託では預かり人数に応じて柔軟に人件費を変動することができるので、無駄がなくなりコスト削減につながります。
託児所・保育園の運営を委託すると以下のようなデメリットがあります。
業務委託料が発生するので、見かけ上の費用はアップします。ただ業務を委託した分だけ、企業の手間や負担が軽減されることがあるので、費用以上のプラス効果も期待できます。
一定以上の保育サービスの質や内容は期待できますが、委託業者によっては自社独自の保育サービスを展開するのは難しい可能性があります。
委託業者の業績が悪化した場合サービスを継続できなくなったり、倒産してしまったりする可能性があります。特に委託料金の安さにとらわれ、信頼性を気にせずに選んでしまうのに要注意です。
託児所や保育園を直営した場合には、コストが抑えられるケースが多い点がメリットのひとつとなります。例えば外部に運営を委託した場合には、園の設立当初からコンサルティング料金や委託料などが発生します。
それに対して、直営であればコンサルティング料や委託料は発生しませんし、職員も自社で雇用するため、運営委託をする場合の人件費よりも費用を抑えられます。ただし、規定の配置基準よりも多く配置する場合においては直営の場合でも運営委託をする場合と人件費の差がなかったり、委託する場合よりも人件費が高くなるケースもありますので、試算を十分に行うことが大切です。
託児所や保育園の直営を行う場合には、開設するまで、また運営を行うにあたっては大変なことや苦労も多くなります。しかし、その経験は託児所や保育園の開設・運営を行う上でのノウハウとして蓄積できます。このようなノウハウは実際に経験しないと得られないものであるため、非常に大きなメリットといえるでしょう。
託児所や保育園を直営する場合には、「やることが非常に多い」点がデメリットとして挙げられます。例えば保育士をはじめとする職員の募集や採用、保育を行うにあたってのカリキュラムの作成などのほか、立ち入り調査への対応といったように、行うべき業務は多数あり、それを全て自社で対応していきます。
もしこれまでに託児所や保育園の開設・運営を行った経験やノウハウが自社にあるのであれば良いのですが、全く初めての経験である場合には非常に難しいと感じられる内容もあるため、負担が大きくなるという面があります。
保育を提供するためには、国によって定められている「保育士配置基準」を満たす必要があります。この基準を満たすことはもちろんですが、保育士の働き方や園の経営における収支バランスについても踏まえた上で保育士の配置が求められます。この点から、自社のみで運営する場合に適正配置を維持できるのか、といった点に関する検討が必要といえます。
企業や病院の保育所は、働く人の環境もニーズも異なります。だからこそ、「どの保育施設に強いのか」「どのような特徴があるのか」を前提に委託業者を選ぶのがポイントです。