厚生労働省は、2021年5月「保育を取り巻く状況について/厚生労働省子ども家庭局保育課」を公表しました。それによると、保育所における利用児童数は2025年にピークを迎えた後、ゆるやかに減少していくことが見込まれている状況です。
近い将来、託児所や保育所の供給が利用児童数を上回ってしまい、定員割れが起きるほか、経営悪化による事業縮小に追い込まれる可能性があると言われています。
かつては、保育所に入園希望の児童数に対して保育所や保育士の数が不足している待機児童問題が各所で生じていました。しかし2025年問題は、その逆であり、少子化で子どもの数が減少したことにより、2025年以降には全国の保育所で「定員割れ問題」「閉園・統合リスク」が強まると言われています。
参照元:保育を取り巻く状況について【厚生労働省】(https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000784219.pdf)
2025年問題によって、保育所の経営悪化や稼働率低下に悩む施設も増加する可能性があります。また、保育士の離職率が高まるリスクも。ここでは、企業内・病院内託児所への影響を解説します。
2025年以降は入園希望者の減少に伴い、保育施設の経営が不安定になる可能性があります。 このまま少子化に拍車がかかれば、閉園や園の統合などに追い込まれる保育園・託児所は増えていくリスクも。
保育所を経営する側は、入園希望者を増やすための競争がより激化する可能性があります。これを考慮し、サービスの向上や質の高い保育内容などを充実させて、他園との差別化をアピールしなければ、生き残れなくなる可能性もあります。
企業の規模や立地などの条件により、十分な利用児童が集まらないケースがすでに一部発生しています。企業内に保育所・託児所を設置したとしても、稼働率低下に悩むケースも増加する傾向にあります。
出生数の減少により、保育園に通う子どもの数が減少し、需要も低下するリスクがあります。定員割れが続くと、保育所の収入も減り、経営が悪化する可能性があります。経営が不安定な状況の中では、保育士の離職率が高まる傾向も。
経営が不安定な保育所では、給与や福利厚生が不十分だったり、十分な設備投資ができず、保育士のモチベーションが低下したりすることから、離職率が高まる場合もあります。保育士不足の深刻化も課題で、一般の認可保育所と同様、安定した人材確保と待遇改善が不可欠です。
保育所における経営課題とそのポイントが気になる方もいるのではないでしょうか。ここでは、保育所の経営課題やポイントを解説します。
保育所や託児所を設置した場合、期待したほど利用児童が集まらないといった経営上のリスクもあります。企業保育所の定員割れは、経営課題として深刻な状況です。定員割れは、収入減に直結し、保育の質の低下、保育士不足、そして最終的には閉園に追い込まれる可能性もあります。
社内のニーズ調査や運営規模の調整、地域住民への開放など柔軟性のある対応が求められます。
保育現場における事故・トラブルなどのリスクも保育所経営における課題の1つです。保育士の人数には限りがあるため、その中で子どもたちを見守る必要があります。安心して過ごせるよう、役割分担を明確にしたり管理の徹底を行ったりすることが大切です。
また、保育士の質や経験不足に関する課題も考慮する必要があります。保育士の現状と主な取組という厚生労働省の公表している資料によると、保育士の経験年数、採用・離職の状況を確認すると、経験年数が低い層の保育士が多く、8年未満の保育士が約半分という状況でした。
経験の浅い保育士は、保育技術や園児への対応に不安を抱えているケースがあります。それら、OJTや研修などを通して、経験年数に応じたスキルアップを支援する必要があります。また、保護者との信頼関係構築や、運営体制の見直しも不可欠です。
参照元:平成27年社会福祉施設等調査【厚生労働省】(https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000592531.pdf)
経営課題とポイントには、運営コスト・人員確保の負担が増加することが挙げられます。保育士人材の確保が難しい場合が多く、人件費・運営コストが高止まりしやすい可能性も。
助成金・補助制度を活用する方法もありますが、設置費用やランニングコストなどで企業の負担も大きくなると考えられます。
スタッフのニーズ把握を徹底し、本当に求められる規模、運営方式へ柔軟にシフトすることが重要です。保育事業者への委託や共同運営を検討するほか、地域に開放して地域枠を設けることで、保育所の利用率を高め、経営の安定化を図るのも1つの方法です。
上記以外には、基本給アップや福利厚生を充実化させるなど、保育士の待遇改善にも注力していく必要があります。
また、保育士の業務負担の軽減、適切な人員配置などを考慮することも重要です。具体的には、音声入力や画像認識を活用することで、保育記録の作成時間を大幅に短縮できるほか、連絡帳や欠席連絡、園からのお知らせなどを一斉に共有可能です。システムを導入することで、登降園時の記録業務の効率化につながります。
日本では、少子化で子どもの数が減少したことにより、2025年以降には全国の保育所で「定員割れ問題」「閉園・統合リスク」が高まると言われています。企業内保育所も例外ではなく、経営悪化や稼働率低下に悩むケースも増加する可能性があります。
このような事態を防ぐためにも、従業員のニーズ把握を徹底し、本当に求められる規模、運営方式へ柔軟にシフトしたり、保育士の待遇改善にも注力したりすることが大切です。
当サイトでは、保育園経営に関する基礎知識や保育所の委託業者の選び方などについて解説していますので、ぜひ参考にしてください。
企業や病院の保育所は、働く人の環境もニーズも異なります。だからこそ、「どの保育施設に強いのか」「どのような特徴があるのか」を前提に委託業者を選ぶのがポイントです。