社内託児所・保育所を設立する場合は、必要な建物・設備要件や保育士も含めたスタッフの配置条件などを知っておくことが重要です。
ここでは、企業内保育所・託児所を設立するまでの流れや設置基準、必要となる費用、業者に委託するメリットについて解説しています。
社内に保育所や託児所を設立するときに、最初に決めなければいけないことは設置場所です。企業の場合は、保有する土地や建物の一部が使えるかどうか検討することになりますが、認可外保育所であっても開設するためには建物や環境などの一定基準をクリアする必要があります。
場所が決まったら開園までのスケジュールを立てます。場合によっては、建物の設計・施工から検討しなければいけません。保育所の規模や保育を受け入れる対象、スタッフの配置人数などを決め、開園までに自治体対応や備品などを揃えます。
これらの作業を委託できる、企業内保育所開設専門の外部業者がいますので、場所とスケジュールが決まったら専門の業者に委託するかどうかを決定しましょう。
社内に保育所・託児所を設立するために資格取得が必要であったり、保育所の実務経験が必要になるということはありません。保育園にするための場所さえ確保できたら、あとは保育所に必要な設備を用意して体制を整えましょう。
社内に保育所・託児所を設立するには以下のような基準を満たす設備・運営が必要になります。
社内に託児所・保育所を開設する場所は、必ずしも企業が所有する土地や建物を使わなくてはいけないということではありません。
もちろん、事業所の敷地内にあれば余分な費用がかからないのでよいですが、近接する場所を借りて保育施設として利用してもよいですし、社員の通勤経路にある駅ビルの中でも構いません。社宅など、社員の居住場所に近い場所を選ぶ方法もあります。
設置場所に関しては、以下のような基準が決められています。これによると、企業の社員に関わる場所という基準があります。
事業所内の敷地内 | 企業が所有する土地に新設する、または既存の建物等を基準に沿った保育施設に変更することで場所を確保します。 |
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事業所近接地 | 事業所の近くに保育施設にするための場所を確保します。複数企業の共同利用で、お互いの中間点にすることも可能です。 |
従業員の通勤経路 | 従業員が通勤に利用する駅ビル内や、駅に近接するビル、その他通勤に便利な場所を選び保育施設として活用します。 |
従業員の居住地の近接地 | 社宅や団地など、従業員がまとまって居住しているような場合は、その近隣地に保育施設を設置して利用することが可能です。 |
このように、場所に関してはある程度自由ですが、保育施設として乳児室や保育室・調理室があり、壁で区画された便所があることが最低限の基準となります。さらに、以下のような面積についての基準があります。
乳児室 | 子供1人あたり1.65m²以上 |
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ほふく室 | 子供1人あたり3.3m²以上 |
保育室 | 2歳以上児1人あたり1.98m²以上 |
乳児室またはほふく室 | 子供1人あたり3.3m²以上 |
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保育室 | 2歳以上児1人あたり1.98m²以上 |
医務室は定員20名以上で必須となります。また屋外遊技場は2歳以上児1人あたり3.3m²以上が必要です。
年齢区分に応じて、以下に定める保育従事者の合計数に1を加えた数以上(常時2名以上)を配置しなければなりません。
配置基準人数における半数以上は、保育士資格保有者でなければいけません。また、配置基準人数の算定で保健師、看護師または准看護師を1名に限り保育士とみなすことができます。
助成決定後は、すぐに電子申請システムへの入力ができます。紙媒体で申請した場合にはデータ移行をする時間が必要になるため、助成決定から2週間後ほど必要です。助成が決定して入力ができるようになった時点で振込銀行口座の準備をして、助成金の請求手続きを行いましょう。
審査に通って企業主導型保育事業の助成が決定した後は、保育施設の工事に着手します。工事が完了したら、電子申請システムで完了報告をしなくてはなりません。工事の完了から1ヶ月後か4月10日のいずれか早い日までに、整備費の完了報告を行いましょう。もしも4月10日までに工事が完了していないときには、工事の進捗を入力して完了報告をすることになります。
企業主導型保育事業の助成金は、一定の条件を満たすと再申請ができます。それは、保育施設の工事が2か年事業になった場合です。
もし1年で保育施設の工事が終わらなかったら、助成金は工事の進捗分が上限となります。例えば、平成30年度中に工事完了見込みで1000万円の助成が決定していたとしても、計画に遅れが出て今年度の進捗が50%だった場合、助成額の上限は500万円に。ただし、残りの500万円は次年度に再申請できます。
これらのことが決まったら、開設後の運営をどうすべきかをできるだけ早い段階で決めましょう。自営と委託でどちらが正しいということはありませんが、選択によって企業側の負担がかなり違ってくるからです。外部に委託する場合は、設立や運営に関わる多くの業務を任せることができ、助成金の申請や自治体対応なども代行してもらえることが多いため、多くの企業で外部に運営を委託しています。
ただし、当然ながら委託料金はかかりますし、保育サービスの範囲は委託する業者によって異なります。そのため自社リスクで保育スタッフも社員として雇い独自サービスを展開しているところもあります。
自社にとってどちらが適しているか判断するためには開設費用や手間などシミュレーションを行い、総合的に判断するのがよいでしょう。
企業内託児所・保育所は、自社で運営する方法と外部業者に委託する方法の2通りが考えられます。
自営の場合は、保育士を募集したり、運営方針を自社で決めて保育士の教育、労務管理なども考える必要がありますが、運営を外部に委託する場合は、保育士の募集や管理も業者が行ってくれるので日々の運営は任せられ、相談や報告を受けるだけでよいというだけでなく以下のメリットもあります。
社内に保育所を開設すると従業員の福利厚生が充実し、離職率が低下したり採用でも優秀な人材を確保できる可能性が高まります。また地域貢献にもつながり、企業のイメージアップ効果も期待できます。
ただ注意したいのが、事故のリスクマネジメントです。もし保育所内で何らかの事故が発生すると、逆に企業イメージダウンになってしまうのです。そのため、保育士の管理や教育体制はしっかり行わなければなりません。
特に自社運営では、運営ノウハウが蓄積するまで時間がかかりますし、その間に何が起きるかわからないため運営委託の方が安心です。
設立に必要な事項を並べるだけだと簡単に見えるかもしれませんが、助成金の申請や保育士募集や備品調達などは、経験・ノウハウが無いとスムーズには進みません。したがってほとんどの場合、企業は設立の段階から業者に委託することが多いようです。
委託するメリットとしては、企業に保育所の設立・運営の経験がなくても手間なく開業することができることです。また、設置場所によっては、社員だけでなく地域の人たちを受け入れる方がよいなど、他企業との共同運営の方が安定するなどアドバイスがもらえるのです。
また、規模に応じた保育士の配置人数や、自治体対応や助成金申請などの手続きもサポートしてもらえる会社があり、保育所運営のパートナーとして心強い味方になります。
社内託児所・保育所を設立することが決まったあとには、行うべき手順が数多くあります。こちらでは、設立の流れを簡単に説明します。
設置方法は3種類あります。ひとつめが、自社で設立して自社の従業員のみが利用する単独設置型です。ふたつめが共同設置・共同利用型で、自社もしくは他企業との共同で保育所を設立して、ほかの企業と共同で利用します。3つめが、保育事業者設置型で、保育事業者が設置した保育所を、単独か他企業との共同のいずれかで利用するスタイルです。
開設までに、自社で運営をするか外部へ委託するかを決めます。外部に委託した場合は、どうしてもある程度の費用が発生してしまいます。その代わりに開設までの手続きや助成金の申請、運営などをひと通り任せることができる利点があります。運営方式は費用に大きく関わってくるので、できるなら早めに決めておきたいところです。
まずは、調査を行って状況確認を行います。そのうえで、預かる子供の人数や開所時間、スタッフの配置人数などを決めていき、開園までのスケジュールを細かく作成していきます。
保育所として利用する建物は、建築基準法、消防法、食品衛生法、自治体で定められている条例などを確認する必要があります。自治体で相談して、それらの条件を満たしているかを確認しましょう。建物によっては、用途変更手続きが必要な場合があります。
保育所の場所や設備を選ぶときは、場所や面積で定められている設置基準を満たさなければいけません。設置基準をクリアしていれば、場所については自社施設のほかに、駅の近くや会社の近隣に保育所を設けることも可能です。
企業主導型保育事業の助成金の申請、設備で使用する備品の用意、スタッフや利用者の募集などです。保育所として選ぶ建物によっては、設計や施工の依頼が必要になることもあります。
開設までに行う手続きには、企業主導型保育事業の助成金の申請があります。助成金の審査に通ったことを確認してから、工事に着手する流れとなっています。それ以外では、保育所として選んだ建物によっては、用途変更手続きを行わなくてはいけないかもしれません。
また、保育園の開設のみでは必要な資格はありませんが、運営する場合は定められている一定以上の資格を持った保育士を配置する必要があります。
保育所の業務委託を行う会社の中には、運営の相談を受け付けている会社も多くあります。まずは自社での運営を行うべきか、初めから委託をするべきか判断に迷っている人は利用してみてもよいでしょう。
相談をしていく中で現状の段階で委託が必要なのか冷静に判断ができるほか、難しい助成金についての相談なども行えるため、企業内保育所に関する疑問や悩みを解決する一つの手段となります。
企業が企業主導型保育所/事業所内保育所の運営を委託するとき、頼りになる特徴を持つ3社を紹介します。
多様なニーズに応えて
満足度アップ
開設~運営まで
トータルサポート
豊富な実績を生かし
各企業にあった保育所運営
【選定基準】
2021年10月22日掲載の「日経MJ(流通新聞)第39回サービス業調査」に掲載されている保育サービスの34社または、2023年6月時点「保育委託」と検索して出てきた会社上位30社の中から、下記特徴別に選定。
・トットメイト…預かりの対象年齢の変更と1名から24時間保育運営に対応し、ベビーシッター派遣サービスのノウハウがある専門スタッフがサポート(参照元:トットメイト公式HP https://totmate.jp/enterprise/enterprise/)
・アピカル…物件探しから対応可能(参照元:アピカル公式HP https://www.apical.jp/jigyousyo.html)
・アイグラン…保育所運営実績No.1(2022年9月7日調査時点)(参照元:アイグラン公式HP https://aigran-jigyosyonai.hoiku-en.net/)
企業や病院の保育所は、働く人の環境もニーズも異なります。だからこそ、「どの保育施設に強いのか」「どのような特徴があるのか」を前提に委託業者を選ぶのがポイントです。