保育士が不足する原因として、保育士の給与水準が相対的に低く、加えて労働環境や待遇の面でも魅力に欠ける現実があります。たとえば、長時間労働になりやすいにもかかわらず、休憩時間の確保が難しい、業務量が多いのに人手が足りないといった問題が日常的に存在しています。こうした状況が続くことで、保育士として働くことに不安を感じたり、他職種への転職を考える人も増えており、結果として慢性的な人材不足につながっているのです。
小規模保育園では定員自体が限られているものの、それでもなお、十分な数の園児を集められないという課題が多くの園で生じています。
たとえば、都市部では保育需要が高い傾向にある一方で、他の保育施設との競争も非常に激しく、ただ開園しただけでは保護者に選んでもらえないことがあります。また地方に目を向けると、少子化や若年層の都市流出などの影響で子育て世代の人口自体が減少しており、そもそも入園を希望する家庭が少ないといった状況も見られます。
多くの小規模保育園は、0歳から2歳までの乳幼児を対象としているため、子どもが3歳になるタイミングで他の保育園や幼稚園に移らなければならないケースが一般的です。
しかし、転園は保護者にとって精神的にも時間的にも大きな負担となります。園の雰囲気や保育方針に慣れた環境から離れ、また一から新しい場所に適応しなければならないことは、子どもにとってもストレスとなるでしょう。こうした理由から、保護者の中には最初から5歳まで通える保育園を選びたいと考える人も多く、小規模保育園は入園の候補から外れてしまうことがあります。
また、保育園選びの際に「転園が必要になること」がデメリットとして認識されてしまうと、小規模保育園への入園を避けられる場合もあるのです。
小規模保育は国の認可事業として整備されてきましたが、実際には公定価格だけでは十分な運営資金を確保することが難しく、自治体からの補助金が大きな支えとなっています。しかし、その補助金自体が圧倒的に不足しており、事業の安定的な継続を阻む要因となるケースもあるのです。
特に都市部では、物件の賃料や開設時の初期費用が非常に高額になる傾向があります。たとえば2015年度のデータでは、「賃貸料加算」として一人あたり月5,200円が支給される場合、小規模保育園の定員上限である19人全員が入園していたとしても、家賃補助として受け取れる金額は月に約10万円にとどまります。
都市部で保育士と園児が快適に過ごせる広さの施設を借りるには、この金額では明らかに足りず、家賃だけで経営が圧迫されてしまうのが実情です。
さらに問題なのは、こうした補助金の内容や支給方針が自治体によって大きく異なる点です。たとえば、東京23区内でも、ある区では家賃補助や保育士の代替者配置の加算制度が整備されている一方、別の区では家賃補助が全く用意されていないというケースもあります。
初期費用についても、全国的な基準はなく、各自治体の財政状況や小規模保育に対する姿勢によって補助の有無や規模が大きく左右されます。そのため、どの地域で開園するかによって、受けられる支援の内容に大きな格差が生まれ、経営リスクも変わってくるのです。
参照元:NPO法人全国小規模保育協議会|第4章 小規模保育の課題と今後[※PDF](https://syokibohoiku.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/12/hakusyo04.pdf)
給与や待遇が保育士不足の原因であれば、待遇の改善や柔軟なシフト制度の導入など、経営者側の工夫と対策を行うことが重要です。保育士が安心して長く働ける環境を整えることが、小規模保育園の安定した運営には不可欠だと言えるでしょう。
園児不足の対策として挙げられるのが広報活動です。ホームページやSNS、チラシ、地域イベントなどを通じて、保育園の魅力を積極的に発信する広報活動を行いましょう。
ただし、こうした広報には時間とコストがかかるため、開業前の段階からしっかりと計画を立てて準備しておくことが成功への鍵となります。
転園への対策は、小規模保育園を開業する際にあらかじめ転園のサポート体制を整えたり、近隣の認可保育園や幼稚園と連携した移行支援を検討することなどが挙げられます。保護者からの信頼を得るうえで重要な対策となるでしょう。
また、継続的に通える系列園の設置や、地域の教育資源との連携を打ち出すことで、園としての魅力や安心感を高める工夫も有効です
補助金に関して、開業を検討する段階で候補地となる自治体の補助制度を詳細に調査し、どのような支援が期待できるのかを事前に把握しておくことが重要です。
また、補助が期待できない地域では、自己資金や民間からの支援、あるいは別の収益構造を視野に入れた事業計画の策定も必要となるでしょう。自治体との連携や制度に対する働きかけも重要となる場合があります。
企業や病院の保育所は、働く人の環境もニーズも異なります。だからこそ、「どの保育施設に強いのか」「どのような特徴があるのか」を前提に委託業者を選ぶのがポイントです。