保育園は全国的に人手不足の状況であり、保育園の経営にも支障をきたしています。そのため保育士を確保するための対策も早急に行わなければなりません。このページでは保育園の人手不足の状況や原因、対策などを紹介します。
厚生労働省では「保育士の有効求人倍率の推移」を調査しており、令和3年度において有効求人倍率2.50と非常に高くなっています。全職業の有効求人倍率は令和3年度が1.03となっているので、保育士の求人が多い状況がわかるでしょう。
その調査からわかるように保育士は全国的に不足している状況があり、平成24年から令和元年まで右肩上がりで求人倍率が高まっています。令和元年から3年にかけて求人倍率は下がっていますが、それでも人手不足の状況は変わっていません。
厚生省による令和4年度の調査によると、待機児童数は2944名となっており、約85.5%の市町村で待機児童なしという報告が発表されています。調査開始以来、4年連続で待機児童数は減少傾向にあり、待機児童数50名以上の自治体は10自治体まで減っているようです。
ただ待機児童が多い、または増加した自治体を見てみると、人口増加率が高い自治体ほど待機児童が多いという現状があります。保育の受け皿の整備が遅れているなどが要因となっており、早急な対処が求められているでしょう。
保育士が不足している原因は給与・業務面など様々な原因があると言われています。ここでは人手不足の原因について見ていきましょう。
保育士が不足している原因には給料の低さがあります。厚生労働省によると全職種の平均給与額は34万円ほどにもかかわらず、保育士は26万円ほどです。そのため他の職種よりも低い給料で勤務せざるを得ない現状があるでしょう。政府はこの現状を解消するために、平成29年度より保育士の給与を35,000円ほど上乗せする政策を実施。経験豊富な保育士なら最大で4万円が上乗せされる仕組みになっているなど、処遇改善に取り組んでいます。
保育士は子供のお世話だけでなく、連絡帳の記入や保護者へのお知らせ、イベントの準備など様々な業務を行わなければなりません。また書類は手書きのケースが多く、余計な業務負担が増えているでしょう。
保育士は週休2日のシフト制を行っているケースが多いですが、休みのタイミングなどは保育園で異なります。とくに保育士不足が深刻化している保育園であれば、まとまった休日が取れないことも。また過剰な業務負担によって残業時間も増えてしまい、就業時間が長くなってしまうケースも少なくありません。イベントの準備などを自宅に持ち帰り、自宅で業務をしている方もいるようです。
保育士に限ったことではありませんが、人間関係の悩みによって保育士を辞めるケースも少なくありません。保育の考え方の違い・仕事の考え方の違いなどで悩みを抱えている人も。また保育園は女性の多い職場なので、男性の保育士は居心地が悪いと感じることもあるでしょう。さらにモンスターペアレントという言葉があるように、保護者との関係性に悩む保育士もいます。クレーム対応など心身ともに負担となってしまうでしょう。
小さな子供を預かるため、命を守らなければならないというプレッシャーを保育士は抱えています。園庭で遊んでいる状況でもケガをしないように見守る必要があり、お昼寝中も呼吸をしているかどうかの確認をしなければなりません。また保護者からもプレッシャーを感じる場合もあり、重い責任を感じてしまい離職してしまうケースもあるのです。
保育士が不足している状況を少しでも解消しなければ、勤めている保育士の負担が増えてしまいます。ここでは保育士の人手不足解消のための対策を見ていきましょう。
まずは保育士の給与面から改善を図りましょう。子供の命を預かっている保育士に対し、適切な給与を支払うことは大切です。また日々の業務負担も多いなど、給与と業務内容の差を埋めることを考えてください。基本給だけでなく、残業代などの賃上げを図るといいでしょう。
過酷な労働条件で働きたいと思う人はいません。そのため残業時間・勤務体制を見直し、保育士が働きやすい環境を整えることが大切です。たとえば数多くのイベントを開催すれば、その分準備に時間を要してしまい、余計な負担が保育士にかかります。そのためイベントの頻度を減らす・規模を小さくするなどの対策を講じましょう。残業の必要性を見直し、保育士一人ひとりの業務負担を減らす工夫を行ってください。
保育士が楽しく働くためには、働きやすい環境を整えることが大切です。保育士同士がコミュニケーションを盛んに取れるような雰囲気を作りましょう。またハラスメント対策・定期的な面談・相談窓口の設置などを行い、気軽に保育士が相談できる場を設けてください。人間関係のトラブルが大きくなる前に対策を講じるようにしましょう。
保育士の業務を根本的に改善しなければ、どんなにイベントの数を減らしても慢性的な残業は解消しない可能性があります。保育士不足・業務負担軽減を目的にICTの活用も検討してください。ITツール・アプリ・AIなどのICTを導入することで、管理の簡略化だけでなく、保育士同士のコミュニケーションもスムーズになります。たとえばお昼寝を見守るICTなどもあり、保育士のプレッシャー軽減にもつながるでしょう。
また連絡ノート・日々のお便りなどの書類関係にも活用すれば業務の効率化アップ・経費削減などの効果も期待できます。記入ミス・漏れなども少なくなるなど、保護者とのコミュニケーションも楽になるでしょう。
企業や病院の保育所は、働く人の環境もニーズも異なります。だからこそ、「どの保育施設に強いのか」「どのような特徴があるのか」を前提に委託業者を選ぶのがポイントです。