ここでは、大手企業の社内保育所導入事例について調べました。導入のきっかけや効果、今後の展望などを紹介しています。
企業内に保育所を設けるとどういった効果があるのかは、実際に導入した会社の事例を確認するとよくわかります。そこで、ここでは大手企業が導入に至る過程や効果について紹介します。
社長が全国の事業所を周って聞いた従業員の声の中に、企業内保育所の設置の要望があったのがきっかけです。総務部からアンケート調査を行ったところ、首都圏でニーズが高いことが判明し、複数の保育所設置が決まりました。
企業内保育所、院内保育所の実績が多い業者に運営を委託することにしました。保育所内で洗濯を済ませてくれるなど、利用者目線で進めていただけとても助かりました。オープン後も情報共有はしていますが、運営は任せています。
保育所を設置してから、産休を使っても保育所が見つからずに退職してしまうケースはゼロになりました。利用者からは、長期出張対応や病児・病後保育の要望もありますが、会社として保育所は労働力強化のためとは考えていません。今回の保育所設置は、従業員のワークライフバランスを維持できるようサポートすることを目的としています。
他の企業や自治体などから問い合わせや視察の申し出があることから考えると、成功事例として受け取られているのだと思います。今後も長く安定して運営していくことを目標に、続けていきたいと考えています。
働くママの目線を大切にしているのが、大手製薬会社D社。子どもの洗濯を保育所内で済ませられたり情報共有を細かくしたりなど、利用者のニーズに合わせた運営でたくさんの社員に利用されています。大手製薬会社D社では、産休後に保育所が見つからず退職したケースは0になったとか。
ヤフー株式会社では、社員の産休・産休からの復職支援や継続支援を目的として、2018年7月2日に企業内保育所「ヒュッテ」を本社が入るビル内に開園しました。
同社では育休制度の他にも短時間勤務・時差勤務・週休3日を選択できる「えらべる勤務制度」を導入しており独自の働き方改革を進めており、産休・育休後の復職率は保育所導入前で96.1%と高い数値が出ていました。
それでも一部では、子どもの預け先が決まらずに職場に復帰できないケースや、やっと預け先が見つかっても自宅や職場から遠い保育施設に預けなければならないこともあるため、そのような問題を解消するために導入が決まりました。
保育園内には約500冊の絵本を置き、読み聞かせプログラム取り入れたり、絵本に登場する動物たちを室内に描いて言葉と物を関連づける認識力を養ったりするなど、保育プログラムも充実。また、希望者には保育園でおむつを用意し、衣類や寝具など園で洗濯する「手ぶら登園」を導入するなど、保護者の負担にも配慮されています。
開設する保育施設は、正社員の子供が対象で定員は12名。7時~18時が基本的な開園時間で、延長で18時~20時の保育にも対応します。日祝日、年末年始、その他休業日は休園とし運営は外部に委託します。
ヤフー株式会社では、企業内保育所導入に合わせて、短時間勤務・時差勤務・休日3日制など、社員の働き方も見直されています。ただ企業内保育所を導入するのではなく、社員の働き方から見直ししたため、96.1%と高い復職率を記録しているのも見逃せないポイントです。
子どもの預け先が決まらずにこれまで復職できなかった社員や、遠くの保育所に預けなければならなかった社員にとって、理想の働きやすい環境となったことでしょう。
企業向けソフトウェアの開発・販売を行う株式会社ワークスアプリケーションズは、「女性が働き続けられる環境づくり」の一環として2016年12月に企業内託児スペースを開設しました。
同社では、それ以前から女性社員の発案により「ワークスミルククラブ」という出産・育児支援制度がありましたが、短時間勤務や育児休業制度に加えて100%の職場復帰を目指し「WithKids」という保育スペースのオープンに至りました。
企業内保育施設の運営でこだわったのが、保育士や看護師、調理師もすべて社員として雇い、自社運営で行っている点です。これまで、社内でプロジェクトチームを組んで企業内託児所にありがちな問題を解決してきました。
社員が利用しやすいように託児所の延滞料金を無料にしたり、おむつや着替えなどを施設側が用意する、調理スタッフが子供と社員に同じ料理を作るサービスを提供するなど、質の高い保育サービスを提供しています。また、より多くの社員が保育スペースを活用できるように、2018年には定員枠を拡大しています。
IT企業にとって、保育事業は異業種で開設するまでにクリアしなければならない条件や法律があって苦労することになりましたが、委託運営では実現できないサービスの充実ぶりは外部からも注目を集めています。
株式会社ドワンゴでは、なかなか保育園が見つからない社員からの要望を受けて、2014年12月「どわんご保育園」を自社オフィス内に開設。育児しながら働く女性社員の活躍を後押ししています。同保育園では、満1歳から2歳の3月まで、定員10名の少人数制で一人ひとりに寄り添った保育を提供しています。
開園当初すぐに入園者が決定し、働き続けたくても保育所が見つからず復職できなかったスタッフの現場復帰が実現できたそうです。
園内では、ランドリーサービスを提供。タオルや着換えなどを洗濯・乾燥できるので、社員は身軽な状態で出社できます。また、給食室も完備しているため、作りたての温かい食事やおやつを園内で提供することが可能です。晴れの日は外に散歩へ、雨の日は社会のカフェテリアゾーンにある遊具で遊べます。職場で子どもたちが遊んでいるのを見ることで、他の社員の間でも「子育てしながら安心して働ける会社である」という共通認識が広がっています。
大量の着替えやタオルを準備せずに子どもを預けられる、と聞くとどれだけ多くの方が笑顔になるでしょうか。保育所内で洗濯・乾燥まで対応してくれるため、朝の忙しい時間帯や帰宅後の手間がカットされます。保育所に預けたままではなく、働きながら子どもの存在を感じられる環境も嬉しいポイントです。
LINE株式会社の事業所内保育園「みどりの保育園」では、教育と保育を組み合わせた「エデュケア」を0歳から実施。2017年4月に開設された同保育園では、子どもたち一人ひとりの個性と才能を開花させ、グローバルに活躍できる人間の育成を目指しています。
保護者と保育士のやり取りでは自社サービスであるLINEを活用し、園での子どもの様子や持ち物など連絡をするなど、最先端のIT企業らしい保育園運営を行っています。
子供を安心して預けることのできる場所が仕事場の近くにあることで、社員がより仕事に集中できる環境を整えています。
LINEを使って保育士とやりとりできるのは、LINE株式会社ならでは。一方通行の保育システムではなく、コミュニケーションも大切にしています。預ける社員も集中して仕事ができるでしょう。ただ預かるだけでなく、子どもの可能性を大切にし、グローバルに活用できる人材育成にも力を入れています。
女性社員が多く活躍する資生堂では、2003年にいち早く事業所内保育園「カンガルーム汐留」を設置。当時事業所内保育園はまだ珍しい取り組みだったことから注目を集めました。2017年11月には「カンガルーム掛川」も新たに開設。同社では、1990年から仕事・育児の両立支援策に取り組んでおり、保育園もその一つとして位置づけています。
また、地域の子育て支援の一環として、自社社員だけでなく掛川エリアに住んでいる地域住民にも開放し、保育を通じて地域と工場が交流する場を作ることも目指しています。
保育園がオフィスに隣接されているため、「迎えにいく時間を考えなくて良いので仕事に集中できる」「子どもがいつも傍にいる安心感がある」などの理由で社員からも好評です。
開園時間は、営業日の朝7時30分から18時30分まで。残業などの状況に合わせて、20時までの延長保育にも対応しています。
インターネットカメラを導入し、社員がいつでも子どもの様子を確認できます。看護師もおり、子どもがすぐ近くにいる環境を、何よりも大切にしているのがポイントです。女性が活躍する会社ならではの取り組みにもこだわり、現状で満足せず改善と進化を続けています。女性の社会進出と子育てを両立させたシステムです。
日本アイ・ビー・エムの事業所内保育園「こがも保育園」は、出産・育児と仕事を安心して両立できるよう2011年に設置されました。
生後57日目~5歳児を対象に、定員31名で受け入れています。「おもいっきり遊ぶ。おもいっきり学ぶ。私たちは、『やさしく・つよく生き抜く力』を育みます」という理念のもと、たくさん遊んで学べる環境を整えています
たとえば、夏祭りやハロウィンパーティー、運動会、クリスマス会、お花見、お別れ遠足など季節のイベントを頻繫に開催。幼児教育専門ネイティブスピーカーによる英語プログラムやリトミック、コンピューターで遊びながら創造力を培うプログラムなど楽しく学べる知育プログラムも充実しています。語学・芸術・科学の教育によって、次世代を担う才能を育てます。
教育と遊びだけでなく、健康面・安全面でもしっかりとした支援体制が整っています。給食は、栄養士が栄養バランスを考えて献立を作成。園内には看護師が常駐し、急な体調不良にも対応。近隣の医療機関とも提携しているので、社員は安心して仕事に集中することが可能です。
子どもたちの安全のため、防犯・防災対策も徹底しています。子どもの様子が気になったら、園内3か所に設置されているウェブカメラで様子を見ることも可能。このウェブカメラは社員のみ閲覧可能で、ID・パスワードが配布されているので子どもたちのプライバシーも守られています。
”企業内保育所=仕事がおわるまで誰かが見てくれる”ではなく、子どもが託児時間に子どもらしく、たくさん遊べる環境を大切にしています。近隣の医療機関とも提携し、看護師も常駐。預ける社員も、集中して仕事ができそうだなと感じているようです。防犯・防炎対策にもこだわった企業内保育所と言えます。
大手企業でも社内託児所を導入するところが増加しています。完全自社運営の会社もあり、今後はもっと増えていくと予想されます。ただし、自社運営では負担が大きいためか、委託業者に運営を依頼するケースも少なくありません。
手続きは大変ですが、退職者の減少や利用者目線での運営など、委託することで良い影響を与えることも。その場合、従業員にとってのプラスになるようなサポート体制を備えた委託業者を選ぶことでうまく経営できるでしょう。
企業が企業主導型保育所/事業所内保育所の運営を委託するとき、頼りになる特徴を持つ3社を紹介します。
多様なニーズに応えて
満足度アップ
開設~運営まで
トータルサポート
豊富な実績を生かし
各企業にあった保育所運営
【選定基準】
2021年10月22日掲載の「日経MJ(流通新聞)第39回サービス業調査」に掲載されている保育サービスの34社または、2023年6月時点「保育委託」と検索して出てきた会社上位30社の中から、下記特徴別に選定。
・トットメイト…預かりの対象年齢の変更と1名から24時間保育運営に対応し、ベビーシッター派遣サービスのノウハウがある専門スタッフがサポート(参照元:トットメイト公式HP https://totmate.jp/enterprise/enterprise/)
・アピカル…物件探しから対応可能(参照元:アピカル公式HP https://www.apical.jp/jigyousyo.html)
・アイグラン…保育所運営実績No.1(2022年9月7日調査時点)(参照元:アイグラン公式HP https://aigran-jigyosyonai.hoiku-en.net/)
企業や病院の保育所は、働く人の環境もニーズも異なります。だからこそ、「どの保育施設に強いのか」「どのような特徴があるのか」を前提に委託業者を選ぶのがポイントです。