保育園がM&Aを行うケースでは、経営難などの課題を抱えていることがほとんど。しかし、運営の外部委託などによって問題を解決できるケースもあります。
株式会社帝国データバンクの調査によると、2025年に発生した保育園運営事業者の倒産件数は14件。前年の2024年の倒産件数は7件でしたから、倍増した結果となっています。
また、休廃業や解散した保育園運営事業者数は32件(前年は24件)。倒産・休廃業・解散などによって市場から退場した保育園運営事業者数は、2025年に過去最多となりました。
しかし、閉園を迎えた保育園が増加している一方で、経営の安定化を実現した保育園もあります。増益となった保育園では、人件費の引き上げや配置基準の見直しなどを行っており、加算措置によって利益が増加しました。
保育園の経営を左右する要素はさまざまですが、上記の結果に大きく影響したのは「保育士を十分に確保できていたか」という点です。保育士を確保できている園では加算措置などによって新たな収入源が生まれているものの、保育士を確保できていない園では受け入れ定員の縮小などによって減収し、閉園まで追い込まれてしまう園もあったようです。
参照元:帝国データバンク|「保育園」の倒産・休廃業解散動向(2025年)(https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260215_kindergarten25y/)
参照元:ダイヤモンド・ビジョナリー|保育園倒産が過去最多にーー「量」から「質」へ転換する保育業界の今(https://www.diamondv.jp/article/5vKn2DkE8R3T5SrWShh3ZU)
そもそもM&Aとは「Mergers and Acquisitions(合併と買収)」の略称であり、保育園でもM&Aを行った事例があります。
M&Aには売り手・買い手ともにメリット・デメリットがあり、売り手側の大きなメリットとしては以下が挙げられます。
「後継者がいない」「経営状況が困難である」といった課題を抱える保育園にとって、M&Aは「事業継続」や「経営安定化」といったメリットをもたらします。
しかし、一方で「売り手・買い手との間で企業文化や保育理念の違いがある」という点には注意が必要。企業同士の摩擦によって職員や利用者へ不安感を与えるリスクがあります。また、M&Aには多くの費用がかかりますが、失敗した際にはムダなコストとなってしまいます。
保育園のM&Aにかかる費用は、「社会福祉法人が運営する保育園」か「株式会社が運営する保育園」かどうかで相場が異なります。
社会福祉法人には株式や持分がないため、無対価での合併となります。また、事業を譲渡する場合は事業の価値に相当する金額で譲渡・譲受することとなり、年買法によって簡易的に事業価値評価を行うことができます。
M&Aの相場は、「時価純資産+営業利益×2~5年」が目安となります。
株式会社が運営する保育園がM&Aを行う場合、一般企業同士のM&Aと同様です。簿価純資産法や時価純資産法、類似会社比較法(マルチプル法)といった方法で算定した会社・事業の価値を基準として、交渉しながら対価を決定します。
対価は主観的な要素に左右されることが多く、たとえば「リスクの有無」や「経営統合によって期待できるシナジー」「思い入れ」などが対価の決定に関与してきます。そのため、一概に相場を挙げることはできません。
参照元:経済産業省|(参考資料2)中小M&Aの譲渡額の算定方法[※PDF](https://www.meti.go.jp/press/2023/09/20230922004/20230922004-2.pdf)
参照元:M&Aサクシード|保育園のM&A動向と最新事例、売却相場を徹底解説(https://ma-succeed.jp/content/knowledge/post-5973)
保育園事業を譲渡する際、新たな許認可取得が求められるケースがあります。手続きが複雑なうえ専門知識が必要になることが多いため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
M&Aの際、賃貸契約や保育士との雇用契約、備品の使用契約といったさまざまな契約を再締結する必要があります。既存の利用者とも契約を結び直すため、大きな事務負担が発生します。
保育園のM&Aの際、保育士の人材流出に注意が必要です。M&Aによって働く環境に変化が生じることで、退職を検討する人材が出てしまうかもしれません。そのため、既存職員の処遇や労働環境などへの配慮をしっかりと行うことが大切です。
保育園では、保育理念や教育方針が園によって異なります。理念や方針が似ている園同士でも若干のズレが生じるため、M&A後に理念を統合・発展させ、利用者や周辺住民の理解を得ることが大切です。
M&Aでは、財務情報の提供や運営体制の説明が求められます。そのため、財務状況の整理や運営体制の文書化などを行いましょう。また、法令を遵守しているかも再度確認し、必要に応じて是正措置を講じます。
保育園のM&Aを成功させるために、適切な相手を選ぶことがポイント。財務条件だけではなく理念や方針といった価値観が一致する相手を見つけ、すり合わせを行いましょう。
そして、M&A後のビジョンを職員や利用者にしっかりと説明し理解を得ることが大切です。
M&Aでは複雑な手続きや専門的な知識が求められます。特に社会福祉法人の保育園がM&Aを行う際には所轄庁との調整も必要になるため、M&Aアドバイザーや法務専門家といったプロのサポートを受けることをおすすめします。
出生数が減少し、少子高齢化が進む日本。「保育園の需要は低下していくのではないか」と考える人もいるでしょう。
しかし、近年では共働き世帯が増加しており、未就学児を預かってくれるサービスを必要としている人は今後も増えると予想されます。未就学児を預かるサービスには保育園以外にもあるものの、「幼稚園の預かり時間ではフルタイムで働けない」などの理由から保育園を希望する人が増えるでしょう。
一方、「保育園の利用児童数は2025年にピークとなり、その後は減少していく」という意見もあります。しかし、今後も保育園の需要が伸びると予想できる以上、M&Aについて慎重に判断することが大切。M&Aにはメリットがある一方、職員や利用者への負担・M&Aのためのコスト・複雑な専門的な手続きといったデメリットもあるためです。
経営が傾いたらすぐにM&Aを行うのではなく、今後の需要も踏まえたうえで見極めることをおすすめします。
参照元:厚生労働省|保育を取り巻く状況について(https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000784219.pdf)
保育園の経営が傾いてしまったとき、M&A以外に「運営を外部に委託する」という選択肢もあります。保育園の経営が傾くのは「経営のノウハウや経験が不足している」という理由が多く、運営のプロに任せることで経営を立て直せる可能性があります。
保育園委託サービスでは、日頃の保育業務はもちろん、労務管理や集客、保育士の募集、イベントなどの独自のサービス提供、経営難の原因究明と問題解決サポートまで行ってくれます。
これからは「保育の質」が重視される時代になります。運営をプロに任せて保育の質を高めることで、「生き残れる保育園」になることができるでしょう。
企業や病院の保育所は、働く人の環境もニーズも異なります。だからこそ、「どの保育施設に強いのか」「どのような特徴があるのか」を前提に委託業者を選ぶのがポイントです。